ファム・ファタールの清怨

ブログの文章は全てフィクションです。

学生時代に力を入れたことを教えてください

喧騒の中声を聞いた新宿。

執着と手垢で駅名が読めないほどの池袋、

手の甲しか触れ合えなかった丸の内、

キスだけはできた山手線ホーム、

抱えられた腕が華奢で笑みがこぼれた恩賜公園

霞むほど遠くても襟足でわかる大久保通り、

喉がからからに渇くほど欲しくてたまらなかった草加

夢を固めたような品川プリンスホテル

観覧車で触れ合った葛西臨海公園

スクショを撮られた「夕月別館」、

コードで鮮血の滴る左肘を縛って下った道玄坂

幸せを使い果たした群馬、

友達の家で肌を重ねた四谷三丁目。

また、友達の家で肌を重ねた向ヶ丘遊園

震えるほどまだ好きだった大阪、

首の日焼けに口付けた片瀬江ノ島

新座の桜のとろけるような白。

冷たい奥歯を噛み締めた快速急行小田原行、

若葉台の花かんむり。

レンタカーとレペゼン地球と山梨の夏、

階段から落ちて頭蓋骨を折った新宿西口、

離れてから知る新百合ヶ丘の夕陽、電動自転車の音。

飛び出した車道のアスファルトが雨に濡れて光る新宿。

また会える気がした上野。

断ち切れなかった大宮。

断ち切った中野。

 

また繋がってしまう新宿。

 

通りかかる度に全部を思い出してしまうほど好きで好きで好きでした、本当に好きだった、私が学生時代力を入れたことがほかにでてこないくらい、全てでした。