ファム・ファタールの清怨

ブログの文章は全てフィクションです。

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

無い

日付の記載なし 全ての時間に値段はつけられるけれど。 首都高を駆け抜ける赤いライトがハイヒールの遥か下で滲むハイアットのバーカウンター。ガラスケースが内側から曇らないように息を潜めて並ぶ宝石達の値札を眺める時よりも、朝日の差し込む歌舞伎町の…

はず

女の空洞について考える。 女は体に空洞を抱えて生まれる。 これはどうしようもない事実だと思っていて、うまれついての性質で、空がうすい青から朱に変わって次第に暗くなっていくように、誰かが定めた訳では無いけれどそういうふうになっているのだと思う…

排水溝

長く浸かるにはぬるくなった湯船の中で、声がどこかにこぼれてしまう気がして、電話口に縋るようにいつか会う予定を、週末会う予定を、水曜日に会う予定を囁き合った。 午前2時16分。 授業のあとに星を見に行きたくて、いつの間にか飲みになって、そして気づ…

12月某日

手紙の下書きを見つけました 頬を撫ぜる風がどこか煙るような匂いを潜らせて過ぎていきます。12月も半ばになりました。冬です。 先日、エレベーターに乗ると女子高生が前に立っていました。白い靴下に木の葉のかけらがついていました。煤けたフェルトが貼ら…

自意識

11月7日(火) Pan!c at the discoというバンドを教えて貰った。家が遠い私の早い終電までの時間、高田馬場の冷たいベンチで、ひとつのイヤホンをふたつに割いて聞いた。肩を寄せあって聞く曲は半分だけのはずなのに、ひとりで聞くそれよりもずっと心に残るの…

「全然覚えてない」

9/27(水) なんの話をしていたか忘れたけど、「ちょっと考えすぎなんだよ」と彼は朗らかに言った。 なんの話をしていたかは覚えていないけど、確かに水曜日の朝11時だった。 炭酸の抜けたコーラのグラス。肩が擦れるほど近くに座るおじさんの社員証。 考えす…